震災復興予算の闇その2

復興予算 原子力ムラに もんじゅ運営独法 核融合研究、42億円流用
2012年9月16日 07時11分

 政府の二〇一二年度予算の復興特別会計のうち、高速増殖原型炉「もんじゅ」などを運営する独立行政法人日本原子力研究開発機構原子力機構)の核融合エネルギー研究費に四十二億円が計上されていたことが分かった。文部科学省は一三年度予算の復興特別会計でも、四十八億円の研究費を概算要求している。東日本大震災の被災地復興のため、国民に新たな負担を求めた復興予算が復興とは直接関係のない「原子力ムラ」の事業に使われた。(中根政人)
 原子力機構に対し、一二年度予算の復興特別会計からは百億円超が支出された。このうち、東京電力福島第一原発事故の収束や除染に関する技術開発費などを除く四十二億円は、日本や欧州連合(EU)、米国、中国など七カ国・地域が核融合エネルギーの実用化を目指して共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)の研究事業に充てられた。ITERは、日本国内では、青森県六ケ所村と茨城県那珂市に研究拠点がある。
 復興とは無関係との指摘について、原子力機構は「被災地の研究拠点を通じて、復興を支える技術革新を促進できる」と強弁。文科省も「被災地の産業振興だけでなく、日本全体の復興につながる」と説明している。
 京都大原子炉実験所・小出裕章助教は「被災地の復興を最優先に考えるならば、むしろ原子力機構の不要不急な研究事業を削減して財源を確保する取り組みが不可欠だ。核融合エネルギーは、実用化のめどが立っておらず一般会計も含めて研究予算を付けること自体が無駄遣いだ」と批判している。
 政府は、東日本大震災の復興財源について、所得税や住民税の増税などで一一年度から五年間で計十九兆円を確保した。だが、津波で甚大な被害を受けた沿岸部の被災地へ十分に回っていないことや、被災地以外の公共事業などに使われていることに疑問の声が上がっており平野達男復興相は実態調査を財務省に要請している。
 原子力機構は原発推進経済産業省文科省の幹部らが天下りしOBが再就職した企業・団体と多額の取引を行っていることなどに批判が集まっている。
◆省庁が分捕り合戦
 災害復興予算の問題に詳しい宮入興一・愛知大名誉教授(財政学)の話 東日本大震災の復興予算は、被災地の復興に加えて「活力ある日本の再生」が編成の目的とされた。そのことで、復興を口実にした各府省の事業予算の分捕り合戦が起こり、復興とは無関係な事業にお金が回る事態に陥っている。
 原子力機構が研究費を復興特別会計から計上したのもその一例で、被災地のためではなく、予算をより多く確保したいという姿勢の表れでしかない。
<国際熱核融合実験炉(ITER)> 太陽で起きている核融合と同様の状態を人工的につくり出し、発電に使えるかどうかを実験する装置。実験炉の建設地をめぐっては、日本と欧州連合(EU)が誘致合戦を展開したが、2005年にフランス国内への建設が決定した。実験炉の運転開始は20年を予定している。
東京新聞

震災復興予算の闇その1

特集ワイド:被災地には後回し!?復興予算にシロアリの群れ 「官僚、いけいけドンドン」武器や核融合研究まで
毎日新聞 2012年09月13日 東京夕刊



 東日本大震災の被災地復興が進まない。多額の復興予算がつぎ込まれているはずなのに、なぜ? 支援を待ちわびる被災地からは「予算にシロアリがたかっている。復興に関係ない事業に使われている」との実に厳しい批判が聞こえてくる。【瀬尾忠義】

 12年度、復興費などを管理する復興特別会計(復興特会)では、復興増税や復興債の発行などで3兆7754億円の予算が確保された。13年度予算は今が策定作業の真っ最中。各省が7日に提出した概算要求では、復興特会は4兆4794億円。12年度当初予算比で18・6%増に上る。

 だが「港の復興は進んでいないし、津波に襲われたJR仙石線の野蒜(のびる)駅は3・11から放置されたまま。復活を目指す中小企業への支援も進まない。復興特会にシロアリの集団が群がって、被災地以外に予算が使われているからだ」。

 怒りをあらわにするのは、宮城2区選出の斎藤恭紀衆院議員(新党きづな)だ。「国民は原発に苦しめられているのに、なんで復興予算が高速増殖原型炉『もんじゅ』(福井県敦賀市)に回るのか」

 斎藤氏が「怪しい予算」と指摘するのは、文部科学省が所管する独立行政法人日本原子力研究開発機構の運営費や設備費などに計上された計約107億円。同機構は「もんじゅ」を運営している。

 文科省の研究開発戦略官付の担当者は「除染などの研究開発などに約65億円、青森県茨城県核融合に関する国際的な研究開発拠点を構築するために42億円を使います。地元大学などと連携して核融合に必要な基礎的な研究を行い、成果を蓄積すれば被災地の復興、発展の原動力になる」と説明する。除染の研究はともかく、核融合の研究開発拠点がどう復興に役立つのか。斎藤氏は「国民は納得しない」と怒るが、文科省は13年度予算でも引き続き復興特会で48億円を要求している。

雑草に覆われた更地が広がっている南三陸町志津川地区。右手前は防災対策庁舎。震災発生から1年半が経過しても被災地の復興は進んでいない=宮城県南三陸町で2012年9月6日

福島:最悪事故が起こるのはこれからなのか?

フランスのル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール誌
福島:最悪事故が起こるのはこれからなのか?
この事実を口にする者は皆無、あるいはわずかだ。日本の原子力発電所の中心部には実は、新たな地震が起こった場合破壊的な力を持つ爆弾が眠っているのだ。

日本人は長年に渡る盲信の後、原子力という支配機構に対する信頼を失った。2012年に実施された二つの調査委員会は、原発関係者達のウソ、怠慢、恥知らずぶりの根深さを暴露した。